AIの相続税相談は本当に正しい?ChatGPTを使う前に知っておきたい注意点

相続について調べるとき、まずChatGPTなどのAIに質問する方が増えています。
もちろん、AIは情報収集の第一歩として便利なツールです。しかし、AIの回答をそのまま信じてしまうと、相続税の申告や手続きで思わぬ不利益を受ける可能性があります。
実際に私も、お客様から
「ChatGPTでも同じことを言っていました。」
「でもAIではこう書いてありました。」
と言われることがあります。
AIは便利ですが、税理士の代わりにはなりません。
この記事では、「AI 相続税 相談」で調べている方に向けて、AIだけでは判断できない理由を、相続税専門の税理士の視点から解説します。
AIは相続税相談に役立つ。でも「正解」とは限りません
AIは、相続税の基本的な仕組み
- 制度の概要
- 用語の意味
を調べるには非常に便利です。
しかし、相続税は個々の事情によって結論が大きく変わる税金です。
同じ質問でも、
- 財産の内容
- 家族構成
- 遺言の有無
- 遺産分割の状況
- 過去の贈与
などによって答えは変わります。
つまり、AIは一般論には強くても、個別判断には限界があります。
AIだけでは危険な5つの理由
1. 質問(プロンプト)が不十分だと答えも変わる
AIは入力された情報だけをもとに回答します。
そのため、
「相続税はいくらですか?」
という質問だけでは、正確な答えは出せません。
実際には、
- 財産の種類
- 評価額
- 相続人の人数
- 遺言の有無
- 配偶者がいるか
など、多くの情報が必要です。
一方、税理士は必要な情報が不足していれば、
「土地は貸していますか?」
「生命保険はいくらありますか?」
など追加で確認しながら判断します。
専門家は”質問する力”も含めて仕事をしています。
2. 相続税には「グレーゾーン」があります
税法はすべてを明確に規定しているわけではありません。
実務では、
- 法律
- 通達
- 裁決事例
- 裁判例
- 国税庁の質疑応答事例
などを総合的に考えて判断します。
ここでいう通達とは、国税庁が税法の運用方法を示した内部ルールです。法律そのものではありませんが、実務では重要な判断材料になります。
また、裁決事例とは、税務署の処分に対する不服申立てや裁判について判断した事例です。
このような資料を踏まえて、
「問題ない可能性が高い」
「リスクが高い」
という実務判断を行います。
AIは複数の考え方を示してくれることもありますが、どの選択肢を採るべきかという実務判断までは難しい場合があります。
3. AIが持つ情報には限界があります
AIは大量の情報をもとに回答します。
しかし、
- 専門書
- 有料実務書
- 会員限定資料
- セミナー資料
- 実務経験
まで網羅しているわけではありません。
また、公開されていない資料や実務上の運用は反映されないこともあります。
そのため、税理士が日々の実務経験から得ている知識まで再現できるわけではありません。
4. AIは誤った情報を引用することがあります
インターネットには正しい情報だけでなく、
- 古い記事
- 誤解を招く記事
- 法改正前の記事
も多く存在します。
AIはそれらを区別しきれず、誤った内容をもっともらしく説明してしまうことがあります。
そのため、
「AIがそう言っていたから正しい」とは限りません。
5. 税制改正への対応が追いつかないことがあります
相続税は毎年のように税制改正があります。
さらに、
- 通達の改正
- 裁判例
- 裁決事例
によって実務の考え方も変わります。
例えば、以前ChatGPTでは、
配偶者の税額軽減について、申告期限までに分割できなかった場合、
「相続税の申告期限から3年以内に遺産分割を行い、その後4か月以内に更正の請求をすればよい」
という趣旨の回答が表示される例がありました。
しかし現在は、税制改正後の制度を踏まえて判断する必要があり、
「分割が行われた日から4か月を経過する日と
相続税の申告書の提出期限から5年を経過する日とのいずれか遅い日となります。」
制度改正を正しく理解していないAIでは、改正前と改正後の情報が混在した回答になることがあります。
税法では、このような制度改正が頻繁に行われるため、最新の法令・通達・実務を踏まえた判断が重要です。
AIは便利なツール。でも最後は専門家へ
私はAIを否定しているわけではありません。
むしろ、
- 制度を調べる
- 用語を理解する
- 税理士へ相談する前の予習
には非常に便利なツールだと思います。
しかし、
AIは「情報提供」が得意であり、「あなたの場合はどうなるか」を判断することは苦手です。
相続税は一度申告すると、多額の税金や将来のトラブルにつながることもあります。
だからこそ、
最後の判断は、相続税を専門とする税理士へ相談することをおすすめします。
まとめ|AIと専門家を上手に使い分けましょう
AIは、相続税について学ぶための強力なツールです。
一方で、
- 入力情報が不足している
- 法改正が反映されていない
- 実務判断ができない
- 誤った情報を引用することがある
といった限界もあります。
「AIではこう書いてあったけれど、自分の場合はどうなのだろう?」
そんな疑問をお持ちでしたら、お気軽にご相談ください。
当事務所では、相続税・生前対策・不動産の相続を専門に、お一人おひとりの状況に合わせたアドバイスを行っています。
AIでは判断できない部分も、実務経験を踏まえて丁寧にご説明いたします。

